†Dragon Guardian†
『……って、こんなこと
してる場合じゃねぇ!!』
壱加は我に返るや否や、
慌てて手紙をテーブルの
上に置いて体を玄関側に
反転させた。
「悪ぃけど夕飯今度な。
明日また来るからよ!!」
「ええっ!?ちょお……」
女性の制止も聞かず壱加
は一目散に柏木宅を飛び
出していった。
***
ようやく弥嘉の部屋の前
に着くと、彼は勢い良く
扉を開けた。
「紗奈恵、いるか?」
「いるか?じゃないわよ
全く……遅くなるんなら
連絡しなさいよね」
流石に待ちくたびれたら
しく、ベッドにもたれか
かる様に座り込んでいた
紗奈恵は、彼が来るなり
下から睨み付けてきた。
「こんな時間まで悪かっ
たな……で、弥嘉は?」
「今は寝てるわ……つい
さっきまでは相変わらず
外ばかり見てたけど」
先程までの光景を思い出
したのか、紗奈恵の表情
からは寂寥感がありあり
と滲み出ていた。
それに胸を痛めつつも、
要件を抱えた壱加は懸命
に言葉を紡いでいった。
「立て続けに悪ぃけど、
明日の朝8時に弥嘉を起こ
してやってくんねぇか?
俺が頻繁にここを出入り
してたら、流石に寮母の
おばちゃんに目ぇつけら
れそうで怖ぇんだよ」
「――分かったわ」
余計な詮索もせず唯受け
入れてくれた紗奈恵に、
壱加は徐に右手を上げて
感謝の意を示すと早々に
部屋をあとにした。