†Dragon Guardian†
暫しその音だけが車内を
支配する中、彼はさして
事も無げに言い募った。
「ところがマスコミに顔
を知られてしまったこと
もあり、卑劣な噂が絶え
間なく流れたそうです。
後日、それを苦に彼女は
自殺をなさったそうで、
長官も当時は大変心を痛
めておいででした」
「そ……んな……」
自身の予想を遥かに凌ぐ
壮絶な過去を耳にして、
都は驚きのあまり思わず
両手で口を覆った。
「ですから、同じような
状況で苦しんでおられる
柏木様を放っておけなか
ったのかもしれません」
「せやから、あそこまで
必死になって……」
そう言い終わらないうち
に都の目からは、またし
ても滴が流れ落ちた。
しかしながらその瞬間、
ふと先刻の彼の横顔が頭
をよぎると、都は慌てて
涙を拭い言葉を発した。
「――綾瀬さんは何でも
知ってはるんですね」
すると、都の何気ない心
遣いを悟ったのか綾瀬は
次第に目を細めていく。
「流石に何でもとまでは
いきませんが、長いこと
彼女とご一緒させて頂い
たので、ある程度想像が
つくというだけですよ」
経験に裏付けされたが故
の懐かしさと寂寥感を含
んだ声は、否応なく都の
胸を押し潰していった。