†Dragon Guardian†

朧気な都の記憶に対して
一瞬疲労感を覚えるが、
それでも綾瀬は根気強く
教え諭すことにした。


「――生前の長官は我が
国の中枢だけではなく、
世界各国とのパイプ役も
担っておりました。とす
ると、今回の式に集まる
のは一体どのような方々
だと思いますか?」


未だに彼の真意が掴めず
思い切り顔をしかめるも
のの、都はさも当然とば
かりに言い放った。


「そりゃあもう、お偉い
さんばっかり……」

「まあ、そういうことに
なりますね。つまり長官
と何かしら交流のあった
方々が参列なさるわけで
すが、その殆どは国家側
の人間であり、あなたを
隣国に送還しようと今も
尚画策しておいでです」

「――――!!!!!?????」


そこでようやく例の話を
思い出した都は、恐怖の
あまり無意識に体を強く
抱きしめる。


「それでも柏木様は長官
が命を賭けてまで貫き通
した思いを踏みにじり、
のこのこと捕まりにいか
れるおつもりですか?」

「で、でも……」

「所詮その考えは、自己
満足にすぎません。もし
仮に、あなたが危険を冒
してまで式に足を運んだ
としても、おそらく長官
は喜ばないでしょうね」

「………………………」


些か突き放した物言いな
がらも、その裏に潜む彼
なりの配慮を感じ取ると
都は言葉を詰まらせた。


「ほんの少しでも長官に
報いたいとお考えなので
したら、どうぞ最後まで
生き延びてください」


どこか祈るような気持ち
で声を絞り出すや否や、
綾瀬は再び運転に集中す
るべく正面を見据えた。

一方都は、そのような彼
の背中を見つめて何度も
首を縦に下ろした。
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