†Dragon Guardian†

瞬時かつ正確に都の不安
を汲み取る洞察力は流石
秘書と言うべきか、綾瀬
は座席越しからすかさず
言葉を紡いでいく。


「――既に部下達を柏木
様のご自宅付近まで配置
させましたので、どうぞ
ご安心ください」


あまりにも想定外の発言
を受けて、都は安心する
より先に幾度となく両眼
を瞬かせた。

それと同時に、都の中で
ある疑惑が“確信”へと
変わっていった。


「やっぱ綾瀬さん、人間
と違うんじゃあ……」

「これ以上くだらない事
を仰ると、今すぐあちら
に送り返しますよ?」

「ス、スミマセン」


表面上の丁寧さをも打ち
消す殺気だった反論に、
都は思わず肩を竦めた。




護送の安全性を考えて、
改札口から最も近いロー
タリーに車を止めると、
綾瀬は振り向き様に自身
の右手を差し出した。


「……お元気で」

「綾瀬さんこそ、元気で
おってください。今まで
ほんまにお世話になりま
した!!長官さんにも宜し
ゅうお伝えください!!」


それに応えるかの如く、
都は屈託のない笑顔を携
えて彼の手を握り返す。

そうして一通りの挨拶を
終えて満足した彼女が、
車から降りるべく足を扉
側に寄せると不意に緊迫
した声が響き渡った。


「――――柏木様」

「は……はい?」


些か取り乱した様子の彼
を不思議に思いつつも、
都は徐に続きを促した。
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