†Dragon Guardian†
すると、暫しの間沈黙を
守っていた翠が何を思っ
たのか突然身を乗り出し
弥嘉に微笑んでみせた。
「あら、今回は高等部の
旅行なんだから弥嘉ちゃ
んは寧ろいるべきだわ。
そ・れ・よ・り・も」
艶やかな唇に指をあてて
意味深に一つ一つ言葉を
区切ると、翠は次第に壱
加へと焦点を移した。
「このガキンチョが私達
と同じバスに乗ってるこ
との方が、よっぽどおか
しいと思うんだけど?」
「あ!?」
「クラスに馴染めないん
だか乳離れ出来ないんだ
か知らないけど、無闇に
弥嘉ちゃんに付きまとう
のはやめてもらえる?」
「はあ!?てめぇこそ何様
気取りだよ!?後からしゃ
しゃり出てきた分際で、
いっちょ前に偉そうな事
抜かしてんじゃねぇぞ!!
それに、男のくせにいっ
ちいち言動が気色悪ぃん
だよ、このカマ野郎!!」
「――なんですってぇ!?
そっちこそ口の聞き方に
充分気を付けなさいよ、
ク・ソ・ガ・キ風情が」
「や、やめてください」
弥嘉は力一杯そう叫ぶや
否や、紗奈恵と共に未だ
激しい口論を続ける2人を
思い切り引っ剥がした。
「ところで……何でこの
クソガキが私の秘密を知
ってるのよ?人のいない
所で勝手にベラベラ喋る
なんて本当にサイテー」
彼女達の制止を受けても
なお内側に不満がくすぶ
るのか、翠は足を組み換
えながら今度は紗奈恵に
鋭い視線を向けた。
これを受けて、紗奈恵は
先程までの調整役から一
変してすぐさま理不尽と
ばかりに噛みついた。
「ちょっと!!変な言いが
かりつけないでくれる!?
私は何も話してないわ」
「アンタ以外誰がいるっ
ていうのよ?これだから
口と尻の軽い女は……」
「――せいぜい歯ぁ食い
しばりなさいよ、翠!!」
「いけ、殴れ、紗奈恵」
『さ……先行きが物凄く
不安でなりません』
もはや収集のつかない惨
状を目の当たりにして、
弥嘉は落胆のあまり盛大
に溜め息を漏らした。