†Dragon Guardian†

その後周囲の手助けの甲
斐あって騒ぎが一段落す
ると、弥嘉はふと思い出
したように口を開いた。


「あの……耀さんがいら
っしゃらないようですけ
れども一体どちらに?」


そう言うなり、弥嘉は目
を皿のようにして車内を
汲まなく探し始めた。

ところが、紗奈恵はひた
すら捜索に勤しむ弥嘉を
困惑気味の表情で見つめ
ながら徐に言葉を紡ぐ。


「あの子は、今回学校に
残るらしいわ。ドラゴン
専科の担当になったばか
りというのもあって課題
が山積みなんですって」

「……そうでしたか」

「直前までは“付き添い
として一緒に行けるかも
しれない!!”ってあれ程
はしゃいでたのにね」

「――耀さんにとって、
今が大事な時期ですから
仕方がありませんよ」


表面上では一応納得する
ものの、弥嘉はどこか寂
しげにぽつりと呟いた。




     ***




バスに揺られること数時
間でようやく目的地に到
着すると、窓ガラスを通
してにわかに信じ難い景
観が飛び込んできた。


「――何よ、これぇ!?」

「確か今回の宿泊地って
旅館だったはずよね?」


眼下に広がる光景に呆然
とする紗奈恵をよそに、
翠は鞄からしおりを取り
出して内容を確認した。


「ま、まあ旅館にしては
かなり珍しいほう……だ
とは思いますけど」

「珍しいなんてモンじゃ
ねぇだろうが!!いくらな
んでも横暴すぎるわ!!」


穏便に話を進めようとす
る弥嘉の努力も虚しく、
壱加は怒りに任せて散々
喚くや否や目標物に向け
て思い切り指を差した。
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