†Dragon Guardian†
「確かに、苗城市には素
晴らしいお寺が沢山あり
ますし、それは一国民と
して見るべきものだとも
今しようとしている事が
集団行動をを乱しかねな
いというのも充分に分か
っております」
どこか寂しげにそう言葉
を紡ぐと、助手席に座る
翠は眉を下げながら徐々
に俯いていった。
「ですが今回がこのメン
バーで来られる最後の機
会なんですもの、折角で
したら良い思い出を作り
たいと思うのが人情じゃ
ありません?」
こうして話す間さえ大粒
の涙を零し続ける翠に益
益動揺したのか、運転手
は些か不自然な程に目を
泳がせていった。
その様子を瞬時に確認す
るや否や、翠は駄目押し
とばかりに首を傾げ存分
に上目遣いを披露した。
「お願い、出来ます?」
「か……畏まりました」
すると、肝心の運転手は
遂に根負けしたらしく見
るからに頬を染めるのと
同時に蚊の鳴くような声
でぽつりと呟いた。
「有難うございます♪」
先程までのしおらしさは
どこへやら、それを聞く
と翠は蒼色の目を細めて
実に明るく微笑んだ。
『あの人れっきとした男
なのに……運転手さんが
可哀想すぎる』
それにひきかえ、後方か
ら一部始終を眺めていた
3人は翠の色香にあてられ
た運転手に対して一斉に
哀れみの視線を送った。