†Dragon Guardian†
「――では、また後程」
それを合図に運転手が一
行を降ろしてタクシーを
走らせるや否や、紗奈恵
は怪訝な表情で翠をまじ
まじと眺め始めた。
「……アンタ、ほんとに
モデルなの?詐欺師の間
違いなんじゃないの?」
「何よ、文句があるなら
寺でも神社でも勝手に一
人で回ってくれば?」
方法はともかく概ね責任
を果たしたにもかかわら
ず些か不躾な振る舞いを
されたため、翠は当然の
ことながら忌々しげに言
葉を吐き捨てた。
するとその直後、紗奈恵
は大層きまりが悪そうに
顔を背け勢い良く早口で
まくし立てていった。
「――翠にしては上出来
だったって言ってるの」
「素直じゃないわねぇ」
若干歪ではあるものの予
想に反して賛辞を賜った
翠は、驚きのあまり一瞬
目を見開いたが次第に苦
笑を漏らしていった。
「まあ……何はともあれ
お二人が仲良くなられた
ようで安心しました」
「いやいや、今回は偶然
利害が一致したってだけ
だろ!?そう簡単にいがみ
合ってた奴らが仲良くな
れるわけねぇからっ!!」
ようやく終わりを迎えた
激しい口論と関係修復へ
の希望に胸を撫でおろす
弥嘉に対し、壱加は違う
とばかりにすかさず口を
挟むことになった。
『前から薄々は感じてた
けど、コイツ……超ド級
の天然なんじゃねぇ!?』
そう考えるなり、壱加は
弥嘉を横目に入れて陰な
がら溜め息をついた。