†Dragon Guardian†

こうして未だに呆けたま
まの弥嘉をよそに、翠は
すぐさまその場にしゃが
み込むと眼光を鋭くして
更なる睨みを効かせた。


「また何かしてごらんな
さい、今度はこれくらい
じゃ済まさないから」


容貌の可憐さとは裏腹に
些かドスの効いた低い声
でそう吐き捨てるなり、
翠はまたもや思い切り男
を地面に叩きつけた。


「うわ……まじパネェ」

「くそっ、付き合ってら
れるか!!オイ行くぞ!!」


すると、今まで騒いでい
たはずの男達は途端に顔
を青白くさせて既にのび
きっている仲間と共に一
目散に駆けていった。




「――えっと、本当に有
難うございました」

「ふふ、気にしないで?
……あら?さっきので結
構胸がズレたみたい」

『む、胸がズレたみたい
って……そのように伺う
と改めて翠さんが男の方
だと実感しますね』


先程までとは打って変わ
って至極のんびりとした
態度で胸部の生地を上下
させる翠を見て、弥嘉は
その違いの大きさに思わ
ず苦笑を漏らしていた。




「ねぇ、あれって……」

「間違いないよ、あんな
美人そうそういないし」

「えっ、誰かいるの?」

「あそこよ、あそこっ!!
よく雑誌とかで見かける
でしょう!?今をときめく
カリスマモデルの……」




「――“MIHARU”だよ」




どこか羨望混じりの囁き
の中で聞き覚えのない単
語も向けられていること
を悟ると、弥嘉は不意に
足を止めて恐る恐る翠の
顔色を伺い始めた。
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