†Dragon Guardian†

「お……お姉……様?」


今もなお彼女達の間を鋭
く射抜く冷気に全神経の
殆どが支配されつつある
中で、弥嘉はそれに抗う
ように弱々しくもやっと
の思いで声を絞り出す。

そのように半ば放心状態
でありながらも懸命に自
身を奮い立たせる彼女の
姿を一瞥するなり、翠は
ただ静かに頷いてゆっく
りと口を開いた。


「MIHARU……美遥はね、
流石に私の双子の姉だけ
あって、常にティーン雑
誌の表紙を飾るほど人気
の高いモデルだったわ」

「………………………」

「だけど気取った所なん
か全然なくてね。むしろ
馬鹿みたいにお人好しだ
ったし、仕事に対しては
誰よりも誇りを持ってや
っていて……そんな姉が
私は大好きだった。ファ
ンもきっと同じ思いだっ
たんじゃないかしら?」


こうして始めこそ懐かし
さで幾分か目を細める翠
だったが、話を進めてい
くうちに今後の展開を暗
示するかの如くその表情
に影を落としていく。


「それなのに、突然姉は
帰らぬ人になってしまっ
たの。飲酒運転中の車に
ひかれて即死ですって」

「――――!!!!!?????」

「何度その相手を恨んだ
か分からないわ。当分の
間は柄にもなく毎晩のよ
うに泣き暮らしもした。
それから数日経った頃、
姉の事務所から一本の電
話がかかってきたの」


想像を遥かに上回る過酷
な事実を前にして最早涙
目の弥嘉を更に追い詰め
るかのように、翠は怒気
を含んだ言の葉を次から
次へと重ねていった。
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