†Dragon Guardian†

「MIHARUにならないか?
ってね……あまりの無神
経さと強欲さに、最初は
一体どのツラ下げて私に
電話してきたんだ!?って
本気で思ったわ」


時が経つにつれその頃の
憤りを鮮明に思い出した
のか、翠は血が滲むほど
に唇を強く噛み締めた。


「だけど、よくよくマネ
ージャーらしき人の話を
聞いて覚悟を決めたの」


こうした一挙手一投足を
目の当たりにして弥嘉は
益々視界を潤ませるも、
翠は既に紅色へと染まっ
た唇を拭くこともせずに
ポツポツとかつての台詞
を漏らしていった。




“あの子は、本来ならば
これからもっと活躍して
頂点に登るはずだった。
それを道半ばで絶たれて
どんなに無念だったこと
だろう。幸い事務所側の
計らいで今のところマス
コミにこの情報は漏れて
いない。ならばMIHARUは
まだ生きていることにな
ると思わないか?少なく
とも私は、現段階で彼女
をただの過去の産物には
したくないんだよ”




「彼の気持ちは痛いほど
良く分かったし、私も姉
の死をすぐに受け入れら
れるほど強くもなかった
のよね。だからどんな形
であれ彼女の存在を繋ぎ
止めておきたくて、最終
的にはモデルを引き受け
ることになったの」


そう語る翠の瞳はゆらゆ
らと寂しげに揺れながら
もどこか決意に満ちたも
のであったため、弥嘉は
泣くことも忘れて思わず
息を飲む羽目になった。
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