†Dragon Guardian†

ここまでくると流石に弥
嘉も決まりが悪いらしく
思わず翠から群集へ視線
を逸らしたものの、今い
る場所が“白昼夢”を体
現する施設だと鑑みても
あまりに異様な光景が目
の端に飛び込んできた。




『あれは……灰色の羽根
と紫の瞳、でしょうか』




今までの経験上十中八九
“ドラゴン絡み”と踏ん
だ弥嘉は、すぐさま真相
を確かめるために大きく
双眸を見開いた。

するとその瞬間、あたか
も鐘の音が響くように弥
嘉の中でじわじわと鈍い
痛みが広がり始めた。




―――なあなあ、こう見
……もウチ……とか思わ
へん?……やねん―――


―――どうぞ……ように
なさってください―――


―――一応これでも……
なんだけどね……言って
もここが……んだ―――


―――な、んで、だよ?
そんな……ねぇよ―――


―――アンタに……アン
タなんかに……せられる
……おいたくせに―――


―――頼む、あの子を我
が家……に誓って―――




『――過去?透視?それ
とも未来?いずれにしろ
あの時とは違い音声のみ
が次々と流れ込んでくる
ような……一体どうなっ
ているのでしょうか?』


かつて二度味わった眼の
発動時とは異なり、脳内
が不揃いの台詞だけで埋
め尽くされるという奇妙
な感覚に、弥嘉は漠然と
した懸念を抱きながらも
何とか意識を保とうと両
足に力を込めていった。
< 285 / 287 >

この作品をシェア

pagetop