彼は甘くてほろ苦い
「なぁ実優。なんかあいつら俺らのこと見てねー?」
裕が指差す場所にはあたしが会いたくない人がいた。
・・・光星先輩と蓮先輩。
忘れようとしてたのにこんな形で会うなんて。

裕には知られたくなかった。

「あはは・・・。気のせいですよ!!!」
「嘘。お前わかりやすすぎ。知り合いかなんか?」
「ほんとになんでもないの!!!!!」
あたしの馬鹿・・・
こんな大声で言うことないじゃん。

知られたくなくて必死だった。
けどそんなの無駄で。

「お前・・・吉沢実優だろ?」
光星先輩が言ってきた。
「そうですけどなんですか?」
あたしは光星先輩を睨む。
「ふーん。結構可愛くなったじゃん。で、隣のは兄貴か?」
「先輩、あたしの家族知ってますよね?あたしにお兄ちゃんは1人もいませんよ」
「悪りぃ悪りぃ。昔の女のこととか覚えてなかったわ。」
こいつは・・・どこまであたしを腹立たせる気・・・?
「何?お前実優の元彼なわけ?」
裕が光星先輩に言った。
「そーですけど。あなたは実優の何すか?」
「彼氏。」
え?あたしって裕の彼女なわけ!?
「ふーん。あんたこいつの過去知ってるんすか?こいつは学校中の笑い者で恥さらしっすよ。」
やめて・・・
「過去がどうあれ俺は今しか見ないね。今の実優にしか興味ねーよ。つーかお前らデートの邪魔。とっとと消えろ」
「はいはい。じゃーな実優。」
光星先輩と蓮先輩は去っていった。
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