美人薄命


「あれっ?この椅子お店に置かないの?」


そこにはこの店で初めて気に入ったあのレザーの椅子。


「どうせ売らないから。」


「そうなんだ。…ね、また座ってもいい?」


「どうぞ。」


もう一度確かめるようにゆっくりと腰を下ろす。

「はぁ。」


思わず溜め息が漏れた。
やっぱり何故かこの椅子は安心する。


「…年寄りみてぇ。」


コーヒーを差し出しながら、目を細めて笑う春人くんに一瞬見とれる。


「な…失礼ねっ!」


「分かったから、飲めよ。」


「…ありがと。」


一言文句を言いたかったのに調子狂うな。



< 104 / 203 >

この作品をシェア

pagetop