美人薄命
「あれっ?この椅子お店に置かないの?」
そこにはこの店で初めて気に入ったあのレザーの椅子。
「どうせ売らないから。」
「そうなんだ。…ね、また座ってもいい?」
「どうぞ。」
もう一度確かめるようにゆっくりと腰を下ろす。
「はぁ。」
思わず溜め息が漏れた。
やっぱり何故かこの椅子は安心する。
「…年寄りみてぇ。」
コーヒーを差し出しながら、目を細めて笑う春人くんに一瞬見とれる。
「な…失礼ねっ!」
「分かったから、飲めよ。」
「…ありがと。」
一言文句を言いたかったのに調子狂うな。