美人薄命


会社を出て、気が付くと春人くんのお店の前に居た。


店内は暗くて扉も閉まっていた。
隣の部屋には明かりが点いてるみたいだけど…お店が閉まってるのに迷惑だもんね。


力無くお店の前にしゃがみ込む。


「私、何してんだろ。」


「何か用?…ってあんたか。」


不意に扉が開き、春人くんが顔を出す。


「えっいや、あの…決して怪しい者では…」


自分で此処に来たけど、理由なんてないから変な答えになってしまう。


「ははっ。知ってるけど。…入れば?」


笑いながらも扉を開けて中へ入れてくれる。


「ありがと。」


「コーヒーでも飲んでく?」


「あ、うん。」


春人くんに続いて奥の部屋へ。


「座れば?」


コーヒーを差し出しながら、顎でレザーの椅子を指す。

促されるまま腰を掛けた。



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