美人薄命


それでも春人くんは何も言わずに話を聞いてくれた。

…椅子造りに集中して聞いてないのかもしれないけど。


私としてはこんな支離滅裂な話や情けない姿を知られたくないから、聞いてない方がいいな。


なんて、少し落ち着いてきた頭で考えながらコーヒーを飲んだ。



「…あのさ。」


「は、はい。」


「俺も椅子造るの自信無くしてたんだけど…けどたった一人の言葉で自分のこと信じれた。間違ってねーなって。そんなものだろ?
あんたが自分に自信ねーんなら、仲間と作ったものに自信持ってやればいいだろ。それから自分に自信持てばいいんじゃねーの。」


「…はい。」


励まされてる?
無愛想ながらも優しさが伝わってくる言葉だった。


聞いててくれたのが嬉しくて、恥ずかしくて…


「…ありがとう!」


やっぱり嬉しさの方が大きくて、一度も振り向かない背中に大きな声でお礼を言った。


「声でけーよ。コーヒー飲んだら早く帰れ。」


「うん!」


何も考えずに此処に来てしまったけど、此処に来て良かった。

春人くんに会えて良かった。


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