美人薄命
「渡瀬っ!」
隆司くんに呼び止められる。
「大丈夫か?」
「へ?」
「その…智也に何もされなかったか?」
「あ…うん大丈夫!ゴミ取って貰っただけだから!」
その瞬間私の視界は何かに遮られた。
背中に感じる手の感触と少しの息苦しさに、隆司くんに抱きしめられていると判った。
「ちょ…」
「何で襲われた相手を庇うんだよ。」
「襲われたって…そんなことないよ?」
平常心を意識しながら隆司くんを押して腕から離れた。
「俺じゃ駄目か?」
「何が?」
「好きなんだよ、お前の事。」
はっ?
隆司くんが私を?
どうしていいのか分からなくて俯く。
「…悪い。」
顔を上げると隆司くんは去って行った。
その背中に何も言えずにただ立ち尽くしていた。