美人薄命
小柄で守ってあげたくなるような可愛い女の子を連れた謙太がそこには居た。
謙太にピッタリと寄り添って甘える彼女。
私とは正反対の女の子。
「っっ…。」
思わず声が出そうになり慌てて口を抑えた。
幸い謙太は私にはまだ気付いていない。
とりあえず謙太に見付からないように出口を目指す。
「あんた何やってんの?」
「わっ!」
不意に後ろから声をかけられて声が出る。
「いやっあの…こ、これ下さい!」
側にあった翡翠色のマグカップを手に取り男の人に渡す。
「こっちの方があんたに合うと思うけど。」
彼が取ったのはピンク色のマグカップ。
何でもいいから早く店を出たい。
「じゃそれを。」
「6000円。」
マグカップが6000円!?
もういい!ぼったくりでも何でもこの場から去れるなら!
慌てて6000円を財布から出して彼に押し付けるように渡した。
「包むから待って。」
「結構です!」
私はマグカップを奪うようにして店を出た。