美人薄命
以前春人くんが帰国した時の陽平さんとの会話を思い出す。
「そう。」
「えっでも春人くんが自分の為に買ったやつじゃないの?」
「そう。」
春人くんはなんてことないように食事をしながら答える。
「そんな大切なもの私が使っていいの?」
「…好きなんだろ?ターコイズ。」
取っ手を買いに行った時の事を思い出した。
あんな些細な会話覚えててくれたかと思うと嬉しくて嬉しくて…
「ニヤニヤしてないで食ったら?」
「っ!?してないっ!…使わせてくれてありがと。」
「どーいたしまして。」
ターコイズという名のマグカップは形は今まで使っていたものと同じだけど、とても綺麗なターコイズブルーをしていた。
昔から使っていたかのように私の手に馴染んでいる不思議なカップだった。