美人薄命


「会いたくて来ちゃった。」


不意に店内からさっきの女性の声が聞こえて身体が固まった。


「春人?私、此処には来ない方が良かった?」


「別に。」


親しげな会話が聞こえてくる。



彼女、なのかな…。
って彼女の一人や二人居るよね。
今まで考えたことなかった。


私…此処に居ないほうがいいよね。
でも今出ていって彼女に変な誤解あたえるのもまずいだろうし…。


「あっ。」


ゴトゴトと音を立てて机にあった工具を落としてしまう。



「誰か居るの?」


「客。」


春人くんの言葉に急に浮かれていた自分が恥ずかしくなりバッグを手に取り作業場を出た。


「あ…長居してすみません。お世話になりました!」


頭を下げて店を飛び出た。



「おいっ…」
「春人。」


美人を追い掛けようとする春人の腕を女性が掴んで引き止める。



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