美人薄命
「…でもいいんですか?
そんなに好きだったのに…」
私は思わず沙織さんに聞いていた。
「そうね…きっと忘れることはないわ。
でも初恋と同じ。忘れることはないけど、思い出のひとつでそれ以上でも以下でもないでしょ?
フィアンセのことも心から愛してるわ。」
沙織さんの言葉に嘘は感じられなかった。
春人くんのことも強がりとかではなく本当に思い出になっているんだと思う。
「でもあなたの何処がいいのかしら?」
「さ、さぁ?私は関係ないと思いますけど…。」
「うふふ、冗談よ!
こうやってあなたと向き合ってみてなんとなく判った気がする。」
悪戯っ子のように笑う沙織さんを見ながら少し温くなったコーヒーを飲んだ。
「今日は有難う。
春人と…お幸せに。」
「あ…いえ…。」
「私もあなたより幸せになるわ。」
そう言って微笑む沙織さんはとても綺麗だった。