美人薄命
逸る気持ちを抑えても自然と急ぎ足になる。
「こんばんはっ!」
上がった息を整えて扉を開けた。
「店閉めるから作業場行ってて。」
言われたように作業場の扉を開けると、そこには見たことのない一脚の椅子があった。
白っぽい木材と茶色の肉厚なクッション。
肘掛けは重厚感のあるのに対して、背もたれと座面は格子になっているので全体的には華奢な印象の椅子だった。
「春人くんまだ来ないし…ちょっとだけいいよね!」
好奇心には勝てずに椅子に腰を下ろす。
「あ…」
座った瞬間に椅子に包み込まれるような感覚と安心感…あのレザーの椅子と同じだった。