美人薄命
ひとしきり笑った髭男が傍にやってくる。
「取れねーの?」
むかつく。半笑いな感じがむかつく。
頷く私を見て髭男がヒールを取ってくれた。
「ほら。」
「…ありがとう。」
恥ずかしさのあまり顔が上げられない。
「帰んねーの?」
「あ…芽衣のとこ行く。」
「偶然、俺も。」
それから何となくふたり並んで歩きだした。
話すこともなくただ黙って歩く。
この雰囲気が嫌じゃない自分が不思議だった。
「部屋どう?」
「へ?…あぁ気に入ってる!スプートニクのお陰で夜更かしもしなくなった!」
話し掛けられるとは思わなかったから驚いた。
「なら良かった。」
「うん、ありがと。」