美人薄命


話すことも無くなったころ、春人くんは来た時と同じように作業を始める。

私まだ居てもいいのかな。


「ねぇ何造ってるの?」


「椅子。」


それは最初に聞いたから知ってるんだけど。
まぁ専門的なこと言われても判んないしいいか。


「ねぇ少し見ててもいい?邪魔じゃなければだけど…」


「どうぞ。」



何も見ないで切ったり削ったり…椅子の何処かであろう部品が丁寧に少しずつ出来ていく。

器用なんだなー。


きっと私の部屋にあるソファーは大きな工場で大量に造られたんだろうけど、昔はこんな風に丁寧に造られたんだろうな。


「あの椅子も誰かがこんな風に造ったの?」


「あの椅子?」


「私が買おうとした売り物じゃないやつ。」


「あぁ、そう。」


「そうなんだ、だから温かみがあるんだね。」


返事をすることなく作業を進める。
私はまた彼の作業に見入っていた。





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