美人薄命
気付けばマンションの前。
「お茶でも…。」
おずおずと声を掛ける。
「いいよ、気使わなくて。」
「そう。それじゃ送ってくれてありがとう。」
「じゃ。」
春人くんが帰っていくのを見送り、私もマンションへ入った。
部屋に戻り、お風呂に入っても、いつものようにコーヒーを飲んでスプートニクを見つめても。
なぜだか春人くんのあの笑顔が頭から離れなかった。
いつも無愛想のくせにあんな風に優しい笑顔も出来るんだ。
失礼な人だと思ったけど本当は優しいのかもしれない。今日だって何も言わずに送ってくれたし。
「髭男のくせに。ふふっ。」
小さな発見をして嬉しい気持ちで眠りについた。