短編集<陰>
きみと私は
息抜きをしよう。


待ちくたびれた私は、ふらりと部屋を抜け出した。



もう三週間も音信不通だ。

元々、連絡の取りにくい人だったから慌てはしない。

けど、動揺は無限に広がる。



「なんでこんなに夢中になっちゃったんだろ」


考えてみても、それは後悔と同じ位無意味だ。








冷たい冬の空気を漂って、
ふと、交差点の信号待ちで、電柱に繋がれた一匹の犬を見た。

リードで繋がれたその犬は、怪我の為か脚に包帯を巻き付け痛々しく引きずっている。

近くに店など、ない。

飼い主は・・・どこ?



信号が青に変わっても、私はそこを動けずにいた。




堪らず、涙を零す。



その犬の姿が、自分に重なる。
私も、傷ついて、捨てられるの?


世の中を恨みたくなった。



「きみと私はきっと、同じ思いだね」


そっと隣りにしゃがみ込めば、凍えた瞳で私を見上げる。





私はただ、この犬に飼い主が現れる事を
切実に願った。
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