狼執事とお嬢様♡
私は数歩後退った。
『なん、で……』
抱きしめたりしたの?
その、あとそれだけの、一言が出ない。
それはまるで、声を奪われたかのように。
「…悪い。」
和哉君は切なそうに視線を下へ落とした。
私は、逸らしたいはずの視線を何故か離すとができなかった。
あまりに切なげな顔をする和也君が、壊れてしまいそうで。
この冷たい風に、浚われてしまいそうだったから…
『…どうしたの…?
なんか、変だよ…』
いつもの和也君じゃない。
それは私の直感だった。
「っとに、鈍感すぎ…」
少し間を取って、再度和也君から出た言葉。
「お前が好きなんだよ…
それくらい、気づけよ…。」