狼執事とお嬢様♡
『ごめんね…』
流れる沈黙。
風は、事を収めたかのように止む。
ゆっくりを開く和哉君の口…。
「…分かってた。
こうなることくらい…
どーせ、執事だろ?お前の好きなヤツって。」
何故、和哉君にそんなことが分かるのか…
何故、そう思うのか。
今は、そんな事は気にしなかった。
『うん…』
素直な気持ちを、伝えたかった。
「…そっか。」
『……』
少し間をおいて、再度話し出した和哉君。
「お前が、遠くから俺を呼んだ時。
夢なんじゃないかって、幻覚なんじゃないかって思った。
穂乃歌が俺の元に駆け寄ってくるなんて、俺の名前を呼んでくれるなんて…思っても見なかった。」
切なげに語る、和哉君。
その表情に、胸がチクンと痛んだ。
申し訳なさからの、痛み。
「渡されたこの小さな袋に、すっげぇ嬉しくなった。
でも、お前にとっては“友チョコ”なんだよな…
本命だったら…どれだけ嬉しいか…
そん時にはもう、フラれたな、って…
結構ショック大きかったぜ?」
小さく笑ってみせた和哉君。
でも、その笑顔に余裕なんて無くて。
悲しそうな、切なそうな笑顔…。