狼執事とお嬢様♡
「それでも、お前…言ったよな?
俺を好きになる、時間と勇気をくれって。」
私は和哉君の、…龍の問いかけに溢れ出した物のおかげで言葉が発せず、首をたてにゆっくりを動かした。
「なのにお前は、また振り出しに戻って、傷ついて。
その心を家柄を使って癒そうと、抑えようとするのか…?」
『え…?』
「お前は!
……凛城の令嬢が…執事と恋だなんて…
どう思われるか分かってんのかよ…」
『……』
和哉君は机に肘を突き、下を俯くと前髪をクシャ、と掴んだ。
「俺だって、こんなにもお前を愛してる…
その気持ちお前がアイツを思うのと変わりないはずなんだ…」
『和哉く…』
「龍。俺の名前は龍だ。」
『龍……』
…龍は、肘を机の下に下ろし、顔を上げる。
『っ……』
顔を見て、罪悪感で気持ちが支配されそうになる。
「俺は、お前が…
好きなんだ…世界中の、誰よりも。」
泣かないで、ください…
お願い、泣かないで…
透き通るような雫。
その涙が龍の気持ちを余計に私の心に入り込んでくる。
私は、自分の頬で乾きそうになっている涙を拭うと、席を立った。
『泣かないで…。』
私は龍の悲しそうな、それでも逞しい背中を後ろから抱きしめた。
気づけば、涙はもうとっくに止まっていた。