堕天使の翼


「鈴ちゃんっ!お昼一緒に食べよっ!」
昼休み。蓮が満面の笑みを浮かべながら、お弁当を持って私に駆け寄って来る。
「…アンタが犬だったら今絶対尻尾が激しく振られてたよね」
「?僕は犬じゃないよ?」
「もしもの話ー」
溜息をつきながら2つのパンを取り出す。蓮は私の前にある椅子に座りながら、目を丸めた。
「…あれ?鈴ちゃん、今日お昼パン??」
「あ…、うん」
「おばさん…昨日も帰って来なかったの?」
「……まあね」
私はベリッとパンの袋を開けながら小さく呟く。
「…もう3日目だよね」
「…そーだね。あ、蓮の卵焼き美味しそー!貰うね!」
「あ、うん…」
この話をさっさと打ち切りたくて、指で蓮の卵焼きをつまむ。蓮は私を心配そうに見詰めていたけど、私はもぐもぐと口を動かしてそれを無視していた。
「…鈴ちゃん」
「んー?」
私はパンを口に詰めながら、目も合わせずに蓮に返事だけをする。
「…僕は、ずっと鈴ちゃんの傍に、」
「あ、ほらほら!チャイム鳴ったよー。ほら早く食べて!教室移動しよ!」
私は蓮の言葉を遮って、表面だけの笑顔を見せながら立ち上がる。

『ずっと傍にいる』

そんな無責任で偽善的な言葉が、私は大嫌いだ。


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