堕天使の翼

――――――――……

「じゃあね、鈴ちゃん!また明日!」
意気揚々と手を振る蓮に、苦笑しながら手を振り返し家の中に入る。
「ただいまー…」
こんなこと言っても、誰も返事なんてしてくんないんだけど…。
そう心の中で呟きながら、玄関に目を移して目を見開いた。
…真っ黒なハイヒール。
私は靴を脱ぎ捨てて、リビングに駆け込んだ。

「お母さん…っ!」

私は思わずそう叫んでいた。お母さんはソファーに座って煙草を吸っている。

「お帰り」

お母さんは私にチラリと目をやると、灰皿に煙草を押し付けながら抑揚のない声で言った。

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