側にいる誰かへ
わかっていたさ。

俺が失ったものの大きさ。

クラスの奴が失ったものの大きさ。

それは違う。

同じ人物が死んだとしても、こいつらはその死をたいして悲しんじゃいない。

こいつらは徹の葬式で涙を流していた。

でも、それは誰に対して流していた涙だ。

不幸な死にあった徹のため?

それとも、優しい自分と思われたいため?

答えはわかっている。

想いは行動に直結する。

こいつらの今の笑顔。

葬式以外誰も徹の家に来なかった現実。

こいつらは口先だけの優しさをもった偽りの人間。

こいつらだけじゃない。

徹の母親の前で涙を流していた大人達も家の外に出れば平気で笑っていた。

こいつらは同じだ。どいつもこいつも。


前で司会をしていた学級委員が俺に何か言っている。

「富塚君意見を…。」

うるせぇな。

「富塚君…。」

わかってるよ。
これ以上俺を怒らせるな。

「富塚…。」

………。

「富…。」

そうかわかったよ。

きっかけは何でもよかった。

俺は座っていた椅子を持ち上げ、学級委員に投げ付ける。

椅子はそいつまで届かず、最前列の野郎の頭に勢いよくぶつかる。

そいつは床に勢いよく倒れ頭を押さえている。

教室が沈黙になり、視線が俺の方に集まる。

俺は深呼吸を一つ入れ、学級委員を睨みつけた。

学級委員はゆっくり後づさりする。

「今がどんな時か。わかってるじゃろコラ。文化祭?辞めちまえ。」

俺の声と同時に頭に椅子をぶつけられた奴が真っ先に立ち上がる。

そいつは俺の方に勢いよく走ってくる。

俺は笑みを浮かべた。

「上等。」

俺は近づいたそいつのタックルを右に避けるとそいつの顔に右のハイキックをくらわせた。

そいつは床に倒れ、動かなくなる。

俺はそいつを冷たい視線で見下す。

そして、こちらを見ているのクラスメート達の方に視線を移す。

「何してる。来いよ。」

俺は冷たく言い放った。

それが喧嘩の合図。

俺に向かって来る大量の男子生徒。

俺達は乱闘になった。
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