側にいる誰かへ
俺は彼女とテ−ブルごしに向かい合う。

裁判が終わってから、お互いまだ会話がない。

話にくいとか、そんなんじゃない。

俺達はただいろいろな事を考えたかった。

でも、考えても答えがでない時は、誰かに頼るしかない。

俺は彼女に話しかける。

俺は彼女にとっての誰かになりたかった。

「何を考えてる?」

「うん。」

彼女は少し考えていた。

「誰かに頼りたいなって。」

彼女は俺をじっと見つめる。

「俺は誰かを守りたい…。」

俺も彼女を見つめる。

もう迷いはない。

俺は席を立ち、彼女を抱きしめる。

心からこの人を守りたいと思う。

彼女もその手を俺の背に当てる。

互いの鼓動が聞こえる。

彼女の鼓動はとても穏やかで本当に心から守りたいと思った。

俺達は互いに見つめ合い、静かに唇を合わせた。



眩しい…。

俺は、まぶたをゆっくり開く。

カーテンの隙間から微かに光が漏れていた。

俺は布団から起き上がろうとしたが、横にいる彼女に気がついた。

そっか。

俺は彼女の顔をしばらく眺める。

俺の方を向いているそね寝顔はとても可愛らしく、年上とは思えない。

俺は彼女を起こさないようにゆっくり布団に戻る。

布団に戻った俺は、彼女と向き合う。

ふいに彼女の頬っぺたをつついてみる。

彼女はこそばゆそうに顔を動かす。

年上か。

関係ないな。

人間の大きさは生きてきた年数で決まらない。

俺が彼女より、大人になれば良いだけの事。

彼女を守れるほどに。

「ん〜。」

彼女は布団の中でモゾモゾ動き、俺の胸に顔をうずめる。

その顔は実に幸せそうだった。

俺は彼女の頭を優しく撫でる。

俺も自然と笑顔になる。

俺は彼女の寝顔をしばらく見ていたいと思った。
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