側にいる誰かへ
こいつから徹の名前が出ただけで腹が立つ。

お前に何がわかる。

止めろ。

俺をその目で見るな。

心で見下すな。

「それで、何か話があるんだろ?」

俺は二人に言い放つ。

まず母が口を開いた。

「あんたが停学になったって聞いて…。家にも帰ってこないから…。」

次に父が言う。

「聡志。お前も17だ。わかるだろ。父さん達を困らせるな。」

「別に良いよ。俺はもう一人で生きていけるし、やりたいようにやるよ。」

「よそさまの家の子を殴るのがあんたのやりたい事なの。」

母は、口調を荒立てる。

「違うよ。でも、俺にも理由があった。」

「もう良い。早く帰って来い。」

父が呟く。

この人はいつもそうだ。

自分が。自分だけが正しいと思って俺の話を何も聞いてくれない。

俺はそんな現実が悲しかった。

「帰らない。」

俺は呟く。

「父さん。母さん。俺この人が好きなんだ。」

俺は彼女の肩を掴んで言う。

彼女は驚いて目を丸くしていた。

「と と 富塚君何を。」

彼女は動揺していた。

「あんた何を。その人は徹君の…。」

母は口を押さえる。

「わかってる。でも彼女は彼女なんだ。徹は関係ないよ。」

なぜ、俺は両親にこんな事を言ったのだろう。

二人がわかってくれるはずないのに。

いや、世間でさえわかってくれないだろう。

でも俺は心から守ろうと思った人の前で嘘をつきたくなかった。

これがガキの意地だとしても…。

この意地をこの先つらぬかないと彼女を幸せにできない。

俺は自信を持って母に言った。

「俺は彼女といるよ。」

「信じられない…。」

母は泣いていた。

俺はその涙に罪悪感はない。

母が泣かなかったらきっと彼女が代わりに泣いていたはずだから。

父は俺に言う。

「お前は何を言ってるんだ。その人は私達と同じ年齢だぞ。それにお互いの立場もある。世間が許すとでも…。」

父の目は、困惑していた。
俺は笑みを浮かべる。

俺は父の困惑した顔が嬉しかった。

「糞くれぇだ。」

俺は父を睨みつけた。
< 31 / 52 >

この作品をシェア

pagetop