側にいる誰かへ
1カ月がたった。

どんなに素晴らしい偉業も他人の脳裏から薄れていくように、もう学校で富塚の噂をする奴はいなくなった。

富塚にとっていつもの日常が始まる。

流れ行く日常の中、今までと何かが違っていた。

変わった事は、

富塚には昔より少し友達が増えた。

今まで富塚の周りには、不良と呼ばれる友人しかいなかった。

しかし、今ではそうでない友人もいる。

富塚の心境の変化は周りに集まってくる人達を確かに変えていった。

付き合う相手が増えれば、今までわからなかった誰かの気持ちがわかるようになる。

富塚は自分の心の成長を強く感じていた。



そして、季節は巡り「春」

富塚は3年生になっていた。

あるパチンコ店で。

富塚は雅樹と共にパチンコを打っていた。

そんな二人に男の店員が近寄ってくる。

彼は二人に注意を始める。

「未成年が……。」

いつかのような光景。

瞬間、徹の声が聞こえたような気がした。

富塚は少し笑う。

そこにあの時の富塚はもういなかった。

富塚は黙って席を立ち、店をでる。

そんな富塚の後ろを、雅樹が小走りでついてくる。

「なぁ?」

「どうした?」

「お前あそこでキレないんだな。」

富塚は笑う。

「当たり前だろ。」

「そうか…。」

雅樹と俺は別れ道につく。

「また明日な。」

「ああ。」

帰り道。

俺は自分の拳の向けるべき場所を考えていた。

まだ、その答えは俺にはわからない。

でも、やるべき事はこの拳で弱い者を助ける事。
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