側にいる誰かへ
俺は席を立ち、前に立っていた店員のむなぐらをつかむ。

睨みをきかせ、店員に大声で言い放った。


「俺達のどこが未成年なんじゃ。理由を言え。テメエが大人なら、俺の目を見て話せ。」

俺の声を合図に雅樹が打っていたパチンコ台を蹴り倒す。
台は壊れ、床にはパチンコ玉が散らばる。

辺りは沈黙に包まれ、この状況を黙って見ていたギャラリーに徹が言い放つ。

「見てんじゃねぇよ。文句があるならかかってけぇ。」

その言葉にギャラリーは、全員視線を反らす。


「うっうっ…。」

気づけば、店員をはションベンを漏らしていた。

涙をうかべ、俺の前で体を痙攣させている。


「しらけた。くだらねぇ。」
俺はバツが悪そうに店員のむなぐらから手を離した。


何だろう。
この胸糞悪い気持ち。
俺は俺の思うがままに行動しただけだ。

俺達を外見で見下している大人に反発してやっただけだ。


俺達は正しい。
なのに何だ。
イライラする。

俺が目指す俺は、弱い奴を助け、強い奴を倒せる俺。

弱いものイジメなんかがしたいわけじゃない。


でも、今の俺の姿はまるで…。

心に沸き上がる疑問に俺はただ立ちつくしていた。

そんな俺の肩を徹が軽く叩く。

「行こうぜ、富塚。コイツらにゃわからねぇよ。」


徹の言葉は俺にとって意味深で、まるで心を見透かされているように感じた。

その真意はわからない。

でも俺にとってその言葉は救い以外のなにものでもなかった。

「ああ。」



気がつくと俺達三人は走っていた。

後ろからはパトカーのサイレン。
横には、必死に逃げる二人の顔。


ぷっ。
俺は思わず吹き出しそうになる。
悩んでいた自分がバカらしくなるほどに。


お前らがダチで良かった…。
俺は心からそう思った。


快晴の空の下、どこまでも走り続ける俺達。

世間からどんなに疎まれても、俺にはその状況が幸せに思えた。
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