側にいる誰かへ
何とかパトカーのサイレンから逃げ切った俺達。

三人とも肩で息をしている。

俺:「お前が台を蹴り倒したからだぞ。」
雅樹:「お前が店員のむなぐらを掴んだから。」
俺と雅樹は疲れで汗だくになりながらも口喧嘩をする。

徹:「結局パチンコをしていた時点で俺達は同罪だろ。」
俺、雅樹:「まあね。」
徹:「はははは」

徹は口喧嘩をする俺達を見て、腹を抱えながら笑ていた。

その顔は実に楽しそうで…、
つられて俺達も笑ってしまう。

徹:「まあ、両成敗って事で帰ろうぜ。」
徹は頭をかきながら言った。
俺、雅樹:「ああ。」

家路への途中、雅樹は彼女との用事があるからと言って、俺達と早々にわかれた。

夕暮れの中、俺と徹は二人でしばらく歩いていた。

「あの時、何を考えていた?」

徹の思いがけない質問に俺は足を止める。

「あの時って?」

「ほら。店員がションベンをもらした時。何か考えてたろ?」

「まぁね。」

「長い付き合いだろ。」

徹は、恥ずかしそうに少し舌をだした。

俺は、徹の質問に少し考える。

「そうだな…。」

何か答えようと、あの時わいてきた感情をゆっくりと思い出す。

「…………。」

しかし、考えても、考えても、上手く言葉にできないと言うのが本音である。


それに、悪い事をするのが当たり前だという不良の世界で俺の考えが徹に受け入れられるとは到底思えなかった。


「自分のしている事に疑問を感じたんだろ。」

徹がふいに呟く。

「えっ」

的を得ている答えに驚き、俺は徹の方を見た。

お互いの視線がぶつかり合う。

俺もそうだと言わんばかりの真っすぐな目。


その瞳は、熱く、温かいものに満ちている。

俺の瞳は…。

俺の瞳は徹にどう映っているのだろう。

わからない…。

けど、その瞳に嘘はつきたくなかった。

俺は何とか考えを整理する。
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