それでも君と、はじめての恋を
「ありがとうございましたー」
店から出ると外はもう暗く、風も冷たかった。
何度も歩いたことのある道が、今日はまた違って見える。あたしとモモ。それと、いつも一緒にいる葵と純がいるだけなのに。
どうしてこんなに幸せに思うんだろう。
「はいは~い。純王子ですよぉ」
「バカじゃんキモイ」
女の子からの電話に出る純に、相変わらず嫌悪感丸出しで突っ込む葵。あたしはそんなふたりの後ろを、モモと並んで歩く。
背の高いモモの隣はいつだって落ち着かなくて、あたしは気を紛らわすように携帯で時刻を確認する。
「7時31分。次の電車って50分くらい?」
駅に向かいながらモモを見上げると、モモはあたしと同じように携帯を開いて、頷く。
「ちょうど来たのに乗る」
「ははっ、だね」
友達の距離で歩くあたしとモモ。隣にいるんだから触れることは簡単なのに、どうしてできないんだろう。
純や、他の男子には意識すらせずに触れるのに……好き人にはできないもんなのかな。
クラスメイトには散々、恋多き女みたいに言われてるってのに。
これじゃあ初心者どころのレベルじゃない。