それでも君と、はじめての恋を


「ありがとうございましたー」


店から出ると外はもう暗く、風も冷たかった。


何度も歩いたことのある道が、今日はまた違って見える。あたしとモモ。それと、いつも一緒にいる葵と純がいるだけなのに。


どうしてこんなに幸せに思うんだろう。


「はいは~い。純王子ですよぉ」

「バカじゃんキモイ」


女の子からの電話に出る純に、相変わらず嫌悪感丸出しで突っ込む葵。あたしはそんなふたりの後ろを、モモと並んで歩く。


背の高いモモの隣はいつだって落ち着かなくて、あたしは気を紛らわすように携帯で時刻を確認する。


「7時31分。次の電車って50分くらい?」


駅に向かいながらモモを見上げると、モモはあたしと同じように携帯を開いて、頷く。


「ちょうど来たのに乗る」

「ははっ、だね」


友達の距離で歩くあたしとモモ。隣にいるんだから触れることは簡単なのに、どうしてできないんだろう。


純や、他の男子には意識すらせずに触れるのに……好き人にはできないもんなのかな。


クラスメイトには散々、恋多き女みたいに言われてるってのに。


これじゃあ初心者どころのレベルじゃない。
< 100 / 490 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop