それでも君と、はじめての恋を
「……矢吹?」
「え、あ。ううん、帰ろうっ! 純はさっさと行け!」
「言われなくても行きますぅ~。んじゃ、また明日ね~ん!」
純が小走りで去っていくのを見ながら、「ウチらも行こ」と背中を軽く叩いてきた葵に微笑む。
気にするなと言いたげな葵は、本当にモモが噂通りの人だったら本気でやめろと言ってきたんだろうな。
純も葵もあたしを心配してくれたんだろうけど、困ったことになった。
せっかくモモのことを、ふたりが認めてくれたのに。
「……モモのバカ」
「なんで」
「背がデカイ!」
全く違う理由を口にするとモモは案の定納得のいかない顔をしたけれど、それでもあたしは眉を寄せた。
「気にすんな桃井。渉は初心者だから」
葵のフォローなのか何なのか。モモはより一層、意味が分からないという顔をしていた。
今までずっと、前にしか進まなかったあたしの初恋は、初めて一歩後退する。
今すぐに付き合いたいわけでも、付き合えると思ってたわけでもない。
だけど、知ってる限りあたしが1番モモに近いと思っていた。
近付けた、友達になれた、仲良くなれた。
でもその先は、モモの気持ちがないと進めない。モモがあたしを好きになってくれないと、進めない。
モモはいつになったら『渉』と呼んでくれるんだろう。
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