それでも君と、はじめての恋を
「……アイライン、濃いかなぁ」
瞳をぐるりと囲んだ黒が、溜め息を吐かせる。
恋愛がよく分からないと言ったモモは、メイクのこともよく分からないんだろうな。
いっそのこと、おにぃみたいにギャル好きです!って公言してくれたら分かりやすいのに。
「……うう~ん」
マスカラを持った手が、迷う。本当はアイラインで迷うべきだったのに、つい癖で引いてしまった。
……メイクが濃いのは嫌いなのか、薄い方が好きなのか、モモに聞いておくんだった。
そもそもあたしみたいなタイプは、対象外なんじゃないかな。
真逆な姫系とか清楚系が好きだったらどうしよう。黒髪が好きだったらどうしよう。
「渉ー? 何マスカラ持ってうなだれてんの? さてはモモのことでも考えてたな?」
ガチャリとドアを開けて部屋を覗いてきたのは、準備を終えたおにぃ。
モモのことは話してたからいいとして、着替え中だったらどうするんだ。