それでも君と、はじめての恋を


「……アイライン、濃いかなぁ」


瞳をぐるりと囲んだ黒が、溜め息を吐かせる。


恋愛がよく分からないと言ったモモは、メイクのこともよく分からないんだろうな。


いっそのこと、おにぃみたいにギャル好きです!って公言してくれたら分かりやすいのに。


「……うう~ん」


マスカラを持った手が、迷う。本当はアイラインで迷うべきだったのに、つい癖で引いてしまった。


……メイクが濃いのは嫌いなのか、薄い方が好きなのか、モモに聞いておくんだった。


そもそもあたしみたいなタイプは、対象外なんじゃないかな。


真逆な姫系とか清楚系が好きだったらどうしよう。黒髪が好きだったらどうしよう。



「渉ー? 何マスカラ持ってうなだれてんの? さてはモモのことでも考えてたな?」


ガチャリとドアを開けて部屋を覗いてきたのは、準備を終えたおにぃ。


モモのことは話してたからいいとして、着替え中だったらどうするんだ。
< 105 / 490 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop