それでも君と、はじめての恋を




退屈な全校集会を終えて、体育館はざわざわと騒がしくなった。


今日はあと1時間だけホームルームに出席すれば帰宅できる。


「渉ぅ、なんか持ってない~?」


3年生から体育館を出ていくのを眺めていると、立ち上がっていた純がお腹をさすりながら声を掛けてきた。


「チョコでいいなら」

「ちょうだいっ!」


言いながら隣に座った純に、ブレザーのポケットから小袋に入ったチョコを数個取り出す。


「葵も食べる?」


後ろに座っていた葵に振り向くと、「うん」と笑顔が返ってきた。2人にチョコを手渡して、自分の分の袋を開ける。


「ちょっと溶けてるかも」

「大丈夫。んまぁ~い」


すぐさま口の中へ放り込んだ純が顔をほころばせて、あたしも葵もチョコを食べた。近くにいたクラスメイトにもチョコをあげて、みんなで他愛ない話をする。


各クラス女子と男子一列ずつ並んでいた形態は、集会が終わった瞬間にめちゃくちゃになっていた。
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