それでも君と、はじめての恋を
「静かに教室戻れーっ」
そんな教師の声を聞きながら2年生が体育館を出て行くのを見遣ると、1年1組が立ち上がったのが分かる。
「俺ら7組って得だよねぇ~。何でも最後でラクちん」
「不利じゃん。今だって寒いから早く教室帰らせろって感じ」
それは確かに。一応暖房はついてるけど、寒いのは変わらない。
純と葵の会話に心の中で同意してると、「あ!」とクラスメイトが体育館の出入り口あたりを指差した。
「冬休みの夜10時くらいに、街中でガラの悪い人と一緒にいたのを見掛けたんだよね。肩とか組まれててさぁ……すっごい悪そうなことしそうな雰囲気で怖かった」
彼女が苦笑しながら口にした話は、この学校の生徒なら誰のことを言っているのか大体分かる。
なおかつ指差した先に有名人がいるなら、100%彼の話だと言っても過言じゃない。
「なんか成績いいじゃん? あれも先生を脅してんだか、先生が恐れてんだかで点数貰ってるって聞いたんだけど。なんにせよ、関わりたくないよなー」
男子もそんなことを言ってる内に彼の背中は見えなくなって、3組が体育館を出て行くところだった。