それでも君と、はじめての恋を


「見えてないって言った!」

「……信じないから」

「だからって何で今更言うかな!?」


どうせなら見えてないを貫き通してほしかった!


モモは前髪をいじるのをやめてズボンのポケットに手を突っ込むと、そのままドアに背中を預ける。


「見えてたって言ったほうが恥ずかしくないのかと思って」


違うの?って顔で見てくるモモに、あたしは脱力して大きな溜め息をつく。


気を使ってくれたんだってことは、重々承知。


でもさ、何か……。


「モモって、どっか抜けてるよね。ちょっと変」


目を丸くさせたってことは、自覚がないってことね。


なぜか優越感に浸るあたしにムッとしたのか、モモはあさっての方を向いて口を開く。


「矢吹に言われたくない」

「は!? あたしのどこが変なの!」


横目であたしを見るモモは、ほんの僅かに口の端を上げただけだった。


それだけで、本当に、何となく。


もしかしたら、悪い噂ばかり流れていたモモに近付いたあたしを、変だって言いたいのかなって思った。
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