それでも君と、はじめての恋を
「……じゃあ、あたし戻るね」
ふと手に握っていた携帯を見ると、もうすぐ本鈴が鳴る時間。
軽く手を上げると、モモはドアを開けて「あ」と呟いた。足を止めると、モモはあたしの携帯を指差す。
「ん?」
「メール。矢吹は、矢吹」
「……」
ドアを開けて教室に入って行くモモを見ながら、本当に変な人だと思った。
……違うか。変なんかじゃない。
無意味に、無意識に。それこそ、無自覚に。
モモはあっさりと簡単にあたしの心を乱す。
徐々に激しさを増す心音をかき消すように、あたしは頬を両手で包みながら教室に向かった。
「あたしはあたしって、何よ……もう!」
グロス塗っていてもいなくても、どっちでも可愛いと言われるよりも、何倍も嬉しいのは何でだろう。
グロスよりも、メイクよりも、“あたし”を見てくれてるんだって思ってしまう。
こんなの自意識過剰なんじゃないかとか、別にモモは深い意味で言ったわけじゃないとか、色々考えてしまうけど。