それでも君と、はじめての恋を
「ていうか、近付くな話しかけるなオーラが凄まじいよね」
葵の言葉に純はうんうんと頷きながら、あたしのブレザーのポケットに手を突っ込む。
「学校にそういう奴ひとりはいるもんだよねぇ~」
どさくさに紛れて人のチョコを勝手に盗るチャラ男もいるしね。
「タチの悪さは純の方が上じゃない?」
そう言うと、葵を含めて周りにいたクラスメイトが声を出して笑った。
「それは一理ある。純、お前いつか女に刺されるぞ」
ぽん、とクラスメイトに肩を叩かれた純はヘラッと締まらない笑顔を見せる。それはもう全く反省してない感じで。
「大丈夫だいじょーぶ。そんな過激な子達と付き合ってないも~ん」
今朝、追いかけ回されてたのは誰だったかなぁ……。
「まぁ俺を取り合う女の子たちは可愛いから好きだけどねぇ」
「「「……」」」
今この場にいる全員が、純ウザいと思ったに違いない。もう慣れたけど、みんなの顔がそう言っていた。
「7組ー! 教室戻れーっ」
教師の言葉に話は途切れて、冷えた体を立ち上がらせる。
6組のあとに続いて体育館を出ながら、本当にタチの悪さは純の方が上かもしれないと思った。
先程会話に上った、悪い噂ばかりの彼よりも。