それでも君と、はじめての恋を


「嬉し泣きか」


葵が小声で言ったけれど、それも違う気がした。


「せんせぇ、大丈夫だから始めて~」

「そ、そうか? 矢吹、具合悪いなら保健室行けよ」



苦しい。痛い。でもあったかくて。


何でか涙が溢れたんだよ。


どうしてかなんて分からない。


近付けた、友達になれた、仲良くなれた。


でもその先は、モモの気持ちがないと進めないことは分かってる。


モモを好きでいることに迷いはないけど、“友達”の距離が分からない。


モモは恋愛に興味がないかもしれないけど、あたしのことを友達と思ってるかもしれないけど。


あたしはこんなメールで、渉って呼ばれたくらいで涙が出るくらい。


モモのことが好きで、好きで、たまらないんだってことだけは分かる。



それから……友達でいいなんて、あたしはこれっぽっちも思えていないってことも。


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