それでも君と、はじめての恋を
▽加速して恋心
大股開いて、がむしゃらに腕を振って、一気に距離を縮めるくらい。
駆け出す勇気を持てば、君は振り向いてくれる?
「ふたりはもちろん俺にチョコくれるよねぇ~?」
あたしと葵の目の前で、先程まで1個上の先輩とイチャイチャベタベタしていた純が笑う。
「今の先輩はぁ、生チョコくれるって言うから……別のにしてねっ?」
首を傾げてライオンみたいな髪を揺らすこのチャラ男。どうやら頭の中までライオンらしい。
近付くバレンタイン。節操なく女子にチョコの催促をしてる純は、男子に刺されればいいと思う。
「つか、あたしが七尋以外にあげるわけないじゃん」
「う~ん。そうくると思った。まぁでも渉が葵の分までくれれば問題なぁ~し!」
「何であたしが純にチョコをあげなきゃいけないの」
他の女の子に山ほど貰うんだから、必要ないじゃん!
「うっ、えぇぇえ~!? そうやって俺には冷たくしてぇ、どうせ桃井にはあげるくせにさぁ~」
「なっ! あ、あげるなんて一言も言ってないじゃん!」
昼休み中の廊下を歩きながら、読んでいたファッション雑誌から純へと視線を移した。
そんなあたしを純はニヤニヤと見下ろして、開かれたページを人差し指でトンと叩く。