それでも君と、はじめての恋を
「熱心にバレンタイン特集なんか見といてぇ?」
「へぇ。手作りですか? 渉さん」
葵に肩を抱かれて、あたしは慌てて雑誌を閉じた。そりゃもう、バンッ!と音が出るほど勢いよく。
「「青春だねぇ~」」とからかってくるふたりの背中を睨みながら、雑誌をギュッと抱きしめた。
純と葵が向かう先に、ピンク色。
相変わらずの無表情で鉄仮面。でも、あたし達の姿を見つけると、わずかに和らぐ表情。
空気が、景色が変わる。
「どしたの桃井~。何で廊下に出てんのぉ?」
「ご飯食べないの?」
「や、何か……視線が痛い」
「「ああ……」」
矢吹と呼んだら怒るとあたしが啖呵を切った日から、1組で昼ご飯を食べるのが習慣になっていた。
と言っても、ほぼ純と葵が強引に1組に乗り込んでいるだけなんだけど。