それでも君と、はじめての恋を
どうしようと思ってる間にドアが閉まり、電車は走り出す。目と鼻の先には、無地の青いネクタイ。
ドッ、ドッ、と激しく鳴る鼓動が聞こえてしまうんじゃないかと思う距離で、あたしは突然の偶然に頬を染めた。
「混んでるね」
「え!? あ、だねっ!」
顔を上げた瞬間、モモの顔がものすごく近くにあって一瞬固まる。
バッと顔を逸らしたことを後悔するよりも早く、顔の目の前をモモの腕が横切った。
「す、すみませんっ」
「……いえ」
「……」
揺れた電車のせいでモモの背中に誰かがぶつかったらしく、バランスを崩したモモは咄嗟にポールを掴んだみたい。
「……ごめん」
「や、あたしは……だ、大丈夫?」
ぎゅうぎゅうと後ろから押されているモモは、あたしの頭あたりでポールを握ってる。
それでも段々と近付く距離に、いよいよ息を止めたくなった。
人なんていっぱいいるのに、あたしの目の前にはモモしかいない。
モモしか、見えない。