それでも君と、はじめての恋を
次第に速度が緩まって、電車が止まる。
モモは降りる人を見たのかポールを離したけれど、乗りこんで来た人の方が多かった。
ほんのわずかに離れた距離がまたグッと近付いて、思わず悲鳴をあげそうになった。
あ、あとひと駅の辛抱……!
そう言い聞かせて前髪をいじっていると、突然肩を引き寄せられた。
……え?
「ちょっとごめん」
『ドアが閉まります』というアナウンスと、モモの声。
「……」
ドアの窓に片手を付いて、もう片方の手でポールを掴むモモ。その両腕の中心にいるあたしの顔は、きっとあり得ないくらい真っ赤だ。
ま、守ってくれてたり……する?
恐る恐る見上げると、乗客を見ているモモの横顔。
キュッと胸が締め付けられて、バクバク鳴ってた心臓がドキドキに変わって。
余裕なんてこれっぽっちもないのに、急に甘えたくなった。